RFMCEdu — 使い方

Radiography and Fluoroscopy Monte Carlo for Education

目次

  1. 1. アプリの概要
  2. 2. 画面構成
  3. 3. ファントムの種類
  4. 4. 照射条件パラメータ
  5. 5. 入射表面線量 (ESD) 計算
  6. 6. 3D 飛跡表示の操作
  7. 7. 右側パネルのグラフ
  8. 8. 統計項目
  9. 9. 物理モデル
  10. 10. おすすめの実験
  11. 11. 制限事項・注意点

1. アプリの概要

RFMCEdu は放射線写真 (Radiography) と透視 (Fluoroscopy) のX線相互作用を、 モンテカルロ法で追跡する教育用ブラウザアプリです。管電圧・濾過・照射野・ 被写体構成 (水槽 / MIRD胸部 / 手ファントム) などのパラメータを対話的に変更しながら、 光子の飛跡・スペクトル・検出器画像・入射表面線量を可視化できます。

物理モデルは Bremsstrahlung + W特性X線 + Al/Cu濾過のスペクトル生成、 Woodcock追跡による輸送、Klein-Nishina (Compton散乱)、 光電吸収、Coherent (Rayleigh) 散乱を扱う簡易実装です。 NIST XCOM 由来の質量減弱係数を対数補間で使用しています。並列計算 (Web Worker) にも対応しています。

2. 画面構成

画面は左・中・右の3カラム構成です。

右パネルのグラフとESD計算セクションは起動時折り畳み状態です。 タイトル横の ▶ をクリックすると展開されます。

3. ファントムの種類 NEW

「ファントム種類」ドロップダウンで3種類から選択できます。

3.1 直方体 水ファントム (water)

30×30 cm 断面 × 厚さ可変 (1〜40 cm) の均質水槽。骨・肺は含まれません。 散乱線とビーム硬化の基礎学習に最適。「ファントム厚さ」で任意の厚さに調整可能。

3.2 MIRDファントム — 胸部 (mird)

医学物理で標準的な MIRD 型ファントムを簡略化した胸部モデル:

胸部撮影のシミュレーションで、脊椎・肋骨・肺野のコントラストがそれぞれ確認できます。

3.3 手ファントム (hand)

掌骨 (中手骨) を模した5本の骨を、1 cm 厚の軟部組織 (水) で囲んだ手モデル:

手のX線写真 (第2〜5中手骨) の教育モデル。骨の輪郭と間の軟組織透過が観察できます。 「ファントム厚さ」は手の場合は固定 (1 cm) で入力不可になります。

4. 照射条件パラメータ

4.1 スペクトル関連

項目範囲意味
管電圧 kVp40〜150X線管の管電圧。最大光子エネルギー (keV) を決定。
固有濾過 (Al当量, mm)0〜10X線管の固有濾過 (窓・油など) の Al 当量厚。
付加Al (mm)0〜20追加のAl濾過。低エネルギー成分の除去。
付加Cu (mm)0〜2追加のCu濾過。ビーム硬化に強い効果。

4.2 幾何関連

項目範囲意味
ファントム種類3種water / mird / hand から選択。
照射野サイズ (検出器面, cm四方)2〜40検出面 (z=厚さ+5cm) における正方形コリメーション。
ファントム厚さ (cm)1〜40ファントムの z 方向厚さ。手ファントム選択時は固定 1 cm。
鉛板 厚さ (mm)0〜5, 0.1刻みファントム手前 (z=0直前) に配置する鉛板。x=0〜15 cm の右半分にのみ配置。0でなし。
ビーム入射角度 (度)-45〜+45ビームの傾き。線源が x-z 平面で SID=100 cm 円弧上に回転。0=真下。

4.3 シミュレーション制御

項目範囲意味
1回の入射光子数10〜10,000,000Startで生成する光子数。多いほど統計精度が上がるが時間もかかる。
飛跡 最大描画数0〜50003D画面に描画する飛跡の最大数。0で描画なし (高速集計のみ)。
使用コア数 NEW1〜64Web Worker による並列計算のワーカー数。1でシングル。初期値はブラウザが報告する論理コア数。

4.4 チェックボックス

4.5 実行ボタン

ボタン動作
Start統計をリセットして新規シミュレーション開始。
Add現在の統計に追加でシミュレーション。光子数を継ぎ足せる。
Stop計算途中で中断。中断時点までの結果は保持。
Reset統計と画面をゼロクリア。

5. 入射表面線量 (ESD) 計算 NEW

臨床的な線量指標を X線管出力係数 (K/mAs) と後方散乱係数 (BSF) から解析的に計算する セクションです。モンテカルロシミュレーションとは独立に動作します。

5.1 入力項目

項目意味
管電流 (mA)1〜1000 mA
照射時間 (ms)1〜10,000 ms → mAs = mA × 秒
FSD 焦点-表面間 (cm)Focal-Skin Distance。20〜300 cm
ターゲット角 (度)X線管のアノード角。5〜22°
整流方式単相全波 / 三相6P / 三相12P / インバータ (μGy/mAs 係数が異なる)

5.2 計算結果

項目意味
mAs電流時間積
HVL₁第1半価層 (mm Al)。スペクトルから計算
実効エネルギーHVL に対応するエネルギー (keV)
BSF後方散乱係数 (Backscatter Factor)。照射野・kVp・HVL から補間
入射空気カーマ Ka,i被写体がない状態でのFSDにおける空気カーマ
入射表面空気カーマ Ka,e= Ka,i × BSF (被写体表面の入射線量)
面積空気カーマ積 PKAKa,i × 照射野面積
「ESDを計算」ボタンで現在の照射条件と入力から算出します。 モンテカルロ結果に依存しないので、Start前でも計算可能。

6. 3D 飛跡表示の操作

6.1 視点切り替えボタン

6.2 マウス操作

操作効果
左ドラッグ視点を回転 (yaw / pitch)
右ドラッグ画面平行移動 (パン)
ホイール拡大 / 縮小

6.3 飛跡太さ調整 NEW

視点ボタン横の「飛跡太さ」入力 (0.2〜5 px) で線幅を調整できます。多数の光子を 表示するときは細く、少数を強調するときは太くすると見やすくなります。

6.4 色の凡例

7. 右側パネルのグラフ

タイトル横 ▶/▼ で開閉します。

7.1 入射X線スペクトル (ファントム透過前, Al/Cu濾過後)

X線管から出て Al/Cu 濾過を通ったあと、ファントムに入る直前のスペクトル。 kVp・濾過を変えるとリアルタイム更新。低エネルギー成分の Al 除去と、W の K線 (59.3, 67.2 keV) が可視化されます。

7.2 検出器 2D画像 改良

検出面 z = (ファントム下面 + 5 cm) に到達したX線光子のエネルギーフルエンス分布。

7.3 検出面 1Dプロファイル

検出面での x 方向 (2 cm ビン) の光子数プロファイル。一次線 (青) と散乱線 (黄) のスタック棒グラフ。

7.4 相互作用 内訳

光子が起こした相互作用の累積カウント (Compton / 光電吸収 / Coherent)。

7.5 サンプリングされた光子エネルギー

実際に追跡した光子のエネルギー分布 (5 keV ビン)。理論スペクトルとの一致確認。

8. 統計項目

項目意味
累積入射光子これまでに生成した光子の総数
透過 (相互作用なし)ファントムを1回も相互作用せずに通り抜けた光子
後方散乱散乱後に線源側 (dz<0) にファントムを出た光子
検出面到達検出面 (z = 厚さ+5) に到達した光子
光電吸収光電吸収の総発生回数
コンプトン散乱Compton (Incoherent) 散乱の総発生回数
レイリー散乱Coherent (Rayleigh) 散乱の総発生回数
実効エネルギー NEW検出面到達光子の平均エネルギー
計算時間 NEWシミュレーションの経過時間 (秒)

9. 物理モデル

9.1 スペクトル生成

連続 X 線 (Bremsstrahlung) は Kramers 則 N(E) ∝ Z × (E_max - E) で近似 (Z=74 タングステン)。 kVp > 70 keV では W の K 特性線 (59.3, 67.2 keV) をガウシアンで加算。 Al と Cu の質量減弱係数で濾過による指数減衰を適用。

9.2 光子輸送: Woodcock 追跡

異種材料 (水/骨/皮質骨/肺/鉛) が混在するため、各領域で μ_max ≥ 全材料 の Woodcock (delta) 追跡を使用。ステップ s = -ln(r) / μ_max、 μ_real / μ_max で実衝突判定。

9.3 相互作用

9.4 材料と密度

材料密度 (g/cm³)用途
空気1.205e-3ファントム外
水 (軟組織)1.00Water / Hand ファントム主部、MIRD トランク充填
骨 density up2.00Hand ファントムの指骨
皮質骨 CORT_BONE NEW2.50MIRD の脊椎・肋骨 (μ/ρ は骨と共通)
肺0.26MIRD の両肺 (低密度)
鉛 (Pb)11.34鉛板

9.5 幾何 (共通)

10. おすすめの実験

10.1 濾過とビーム硬化

80 kVp / 総濾過 2.5mmAl でスペクトルを見た後、付加Cu を 0.1 → 0.5 mm と増やして スペクトルが硬化 (高エネルギー側にシフト) するのを確認。ESD計算で HVL₁ と 実効エネルギーが上がることも確認。

10.2 ファントム種類比較

同じ 80 kVp / 20cm 照射野で:

10.3 散乱線比率

2D 画像を「一次線」「散乱線」「合計」で切り替え、散乱線がコントラストを低下 させる様子を可視化。照射野を 5 → 30 cm に広げて散乱線比率の増加を確認。

10.4 鉛板による部分遮蔽

鉛板 0.5 mm を入れて撮影。左半分 (x<0) と右半分 (x>0) のコントラスト差を確認。 右半分は Pb でほぼ完全遮蔽。

10.5 臨床線量シミュレーション

胸部撮影の典型条件 (80kVp, 500mA, 20ms, FSD 180cm) で ESD を計算し、 mAs / kVp を変えたときの ESD の変化を確認。

10.6 並列計算による高速化

入射光子数を 100 万に設定し、使用コア数を 1 → 4 → 8 と変えて計算時間の短縮を確認。

11. 制限事項・注意点

教育用の簡略モデルです。実際の臨床線量計算や研究用途には 汎用モンテカルロコード (PHITS, EGS5, Geant4, MCNP など) を使用してください。
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